寄付遺贈について

みなさん、こんにちは。今回のテーマは遺贈寄付です。最近ではテレビや新聞、雑誌でも特集が組まれることもありまして、遺贈寄付という言葉を見聞きしたことがあるという方もいらっしゃるかと思います。遺贈寄付を簡単にいえば、遺贈、つまり自分の財産を特定の誰に引き継いでもらいたいかを遺言に書いておく中で、親族や知人などに引き継いでもらうのではなく、自分の財産の一部または全部を寄付したいということを書き記しておくものです。

遺贈寄付は、夫や妻、子や孫に財産を遺すだけでなく、お世話になった母校やその同窓会、町内会などに遺産の一部を寄付するケースや、生涯独身の場合や、子がない状態で夫や妻と死別や離婚をしてしまった場合に、親や兄弟、知人ではなく、遺産の全部もしくは一部を寄付するケースなどで検討されることがあります。

寄付は無償であげることですから、寄付する先には喜んでもらえるはずだと思われるかもしれませんが、遺贈寄付のやり方によっては、寄付する先を困らせてしまったり、寄付の受け入れを断られてしまったりすることもあります。今回は、遺贈寄付を検討する場合のポイントについて、いくつか挙げてみたいと思います。

遺産を寄付するにあたっては、遺言に寄付する相手先やその財産を記載する必要があります。そしてその記載の仕方にいくつかのポイントがありますので、その一部について考えてみましょう。

 

寄付先に寄付する内容を具体的に決めておくとよいでしょう。例えば、○○同窓会に現金●●円を遺贈する、のような具体的な内容です。

稀に、相続人Aに現金●●円を遺贈し、相続人Bに現金●●円を遺贈し、その他すべての財産を○○同窓会に遺贈する、といった遺言を目にします。シンプルな内容ですし、やりたい事も伝わってきますが、この書き方ですと○○同窓会と揉めてしまうかもしれません。この場合、○○同窓会への遺贈は具体的な財産を示していないので、包括遺贈と評価されてしまいます。包括遺贈を受けた○○同窓会は、遺贈を受けた財産だけでなく、包括遺贈の割合に応じた債務も引き継ぐことになります。さらに、○○同窓会は被相続人の所得税についての準確定申告義務も負うことになります。財産を引き受けたがために、債務を引き継いだり、相続税のほかにも税務申告の義務を負ったりするなど負担が増えるようでは、同窓会としては寄付をお受けできません、と言われてしまうかもしれません。

さらに、遺贈を受けた「その他すべての財産」のなかに株式や投資信託といった有価証券や不動産が含まれている場合には、被相続人の準確定申告の際に譲渡所得税の検討が必要になります。相続人がいる場合には相続人と共に、相続人がいない場合には○○同窓会が単独で、被相続人の準確定申告をした上で、所得(儲け)が出ている場合には所得税の負担が生じてしまいます。

 

また、例えばお世話になっているNPO法人などに具体的な財産を示した形での遺贈(これを前述の包括遺贈に対して「特定遺贈」といいます)による寄付をした場合で、その財産のなかに有価証券や不動産が含まれている場合にも考えておくべきポイントがあります。

この遺贈による寄付をした有価証券や不動産についても被相続人の準確定申告と所得(儲け)が出ている場合の所得税負担を検討しなければならないのですが、今回の「特定遺贈」の場合には、前述の包括遺贈のときとは異なり、特定受遺者には被相続人の準確定申告の申告と納税の義務は生じず、相続人に申告と納税の義務が生じます。

仮に、被相続人に配偶者や子がなくて、親も他界しており、相続人が兄弟姉妹や甥姪だけだった場合、被相続人の財産を全く受け継いでないときでも、被相続人の兄弟姉妹や甥姪が被相続人の準確定申告の申告と納税の義務を負うことになってしまい、その兄弟姉妹や甥姪としてはたまったものではありません。

もっとも、NPO法人のように公益性の高い法人に対する遺贈寄付の場合には、譲渡所得税が非課税になる特例もありますが、このような特例を適用するための要件は厳しいものが多く、遺言作成段階での寄付先候補との事前準備が重要です。

 

このように、遺贈寄付については比較的シンプルな例を挙げても考えるべきポイントがいくつもあり、財産構成や遺贈寄付先によってはさらに考えるべきことが増えることになります。

遺贈寄付は、自分の生前の感謝の気持ちを具体的に表す方法としては意義深いものですが、場合によっては寄付先の判断により実現できない可能性が出てしまうケースがあることも事実です。

 

遺贈寄付を含んだ遺言作成をお考えの方、すでに作成している遺言の内容にご不安がある方や見直しをご検討されたい方、そして遺贈寄付を実現させるための準備に必要な課税関係や税負担のご検討が必要だと思われる方は、是非ご相談ください。

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