『親子間や親族間での不動産売買って価格をいくらにしたらいいの?』

7月いっぱいは梅雨空が広がっていた横浜ですが、8月にはいって梅雨明けした途端に連日の猛暑が続いています。新型肺炎の感染予防はもちろんですが、バランスのよい食事と睡眠、そしてこまめな水分補給で熱中症にも気をつけて、まだまだ続く暑い夏を乗り切っていきましょう。

さて今回は、最近お問合せが多い不動産の値付けについて考えていきたいと思います。不動産の値付けといってもいろいろです。不動産屋さんに売主もしくは買主を探してきてもらって、全然知らない赤の他人(第三者)同士が売主と買主になってする売買(一般的な売買ですね)から、親子や親族同士でする売買まで様々なものがあります。このところよく頂くお問合せは個人間売買と呼ばれる不動産業者さんを間に挟まないで売主と買主が直接やりとりする売買で、なかでも親子や親族同士で不動産を売買するときにいくらで売買したらよいかというものです。皆さんがなぜ売買価格を気にしているかというと、第三者間で売買するときの一般的な価格よりもあまりにも低い金額で売買したときは、買主さんに贈与税が課されてしまう可能性があるからです。一般的な価格よりも売買価格を低くしてもらった分だけ買主さんはトクをしていることになります。このトクした金額が売主から買主への贈与にあたるので、贈与税を課しますよという規定が相続税法の中にあります。特に売主と買主が親子間だったり、親族同士だったりする場合は、忖度が働きやすくなるものです。また、その点を律して「公明正大に取引します」と言ってみたところで、何をもって正しい金額にしたらいいのか分からない、という状況になってしまいます。そこで、妥当と評価しうる方法により金額を算定し、売買価格として採用します。

そして今回は、不動産の中でも土地の価格を算定する方法にしぼってみていきたいと思います。

(1) 不動産鑑定士による鑑定評価額

まず初めに頭に浮かぶのが不動産鑑定士による鑑定評価額です。不動産鑑定士は不動産の価格を適正に評価できる唯一の国家資格です。不動産鑑定士の業務範囲は広く、親族間取引はもちろんのこと、取引対象の不動産の個性が強くて一般に売りに出しても買い手がつかないような物件についても妥当な取引額を算出して鑑定書にまとめてくれます。ただ、当然ながら通常はン十万円以上の費用がかかりますので、出来るだけ安く済ませたいっ、という方にはハードルが高いかもしれませんが、根拠に基づいて算出してくれますので、売主買主双方とも納得感を得やすいため、お勧めです。また、建物も一緒に売買する場合や、マンションなど建物の売買がメインの場合にも鑑定評価額を算出してもらえます。

(2) 公示価格を参考にする。

次の方法として、公示価格を参考にする方法があります。公示価格は標準地という全国各地に選定された場所における毎年1月1日時点の価格です。商業地や住宅地などに標準地が設定されています。先ほどの不動産鑑定の規準になったり、固定資産税評価の基準になったり、行政が公共用地として購入する際の規準になったり、と公共性の高さに特徴があります。実際に売買しようとしている物件そのものの価格ではありません(稀に売買物件が標準地そのものであることもあります)が、標準地の場所が近いので、公示価格を基準にして取引価格を決める方もいらっしゃいます。

(3) 相続税評価額をベースに割り戻す

3つ目の方法として、相続税評価額をベースにして割り戻す方法があります。相続税を申告する際に、相続財産に土地が含まれていて、その土地に路線価という金額が付されている場合には、この路線価を用いて土地を評価することになります。路線価は国税庁が毎年7月初旬に公表する路線価図という地図に表示されています。路線価はこの付された道路に接する正方形の土地1㎡あたりの金額で、この路線価は通常の取引価格の概ね80%程度になっているとされているため、「路線価を用いて評価した相続税評価額÷0.8」を売買金額として採用します。路線価図をみると、路線価が付されていない地域もありますが、その場合には評価倍率表(通常は一般の土地等用)に記載された倍率を、基準年度の固定資産税評価額に乗じて算出した相続税評価額を0.8で割って算出します。

(4) 不動産業者さんによる査定額

最後に、不動産業者さんによる査定額があります。一般的な売買では、この査定額を基準にして値付けをし、売り希望を出して買い手を探すことが多いです。そして買い手が物件を探す際にも、値段が妥当かどうかの判断材料にします。

不動産業者さんは、売買の間を取り持つ仲介という業務も行っているので、親子間や親族間で売買することが決まっている場合に査定書だけ出して欲しいという要望に応えてもらえないこともあります。

また、その親子間や親族間での売買の際に、買主が住宅ローンを組みたいと考えている場合には、不動産業者さんへの相談をお勧めします。住宅ローンを融資する銀行は、売買契約書と重要事項説明書の提出を求めてくることが多いです。この重要事項説明書は自分達で作成することができず、不動産業者さんに作成してもらう必要があるため、事前に相談する不動産業者さんを探しておくとよいでしょう。

 

いかがでしたか。比較的よく用いられる方法として4つを取り上げてみました。稀に、いくつかの方法によって算出した金額を足して2で割ったりして、金額の妥当性を高めようとする方がいらっしゃるのですが、これは逆効果です。金額の算定については「混ぜるな危険」と覚えてください。

親子間・親族間での売買とはいえ、他の親族に全く無関係ということは少ないかも知れませんので、可能な限り、根拠のある妥当な価格での取引を目指して頂ければと思います。

また、売買により不動産の登記名義が移れば、法務局から税務署に連絡が入ります。税務調査の対象になるかは分かりませんが、少なくとも税務署のチェックは入ることになります。便宜を図り過ぎた取引価格の設定によって、贈与税の課税対象にならないようにご留意頂ければと思います。

 

不動産の売買による譲渡所得税の申告や、親子・親族間贈与による贈与税の申告は横浜よつば税理士事務所までご相談ください。

また、借地権の問題や共有の問題、収益物件の立ち退き問題、その他不動産に関する全般的なお悩みについては横浜よつば法律税務事務所の弁護士までご相談ください。

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