「その会社、無くしちゃって大丈夫ですか?」~閉鎖登記と復活~
皆さん、こんにちは。
さて今回は、登記に関するお話です。登記はザックリ大きく分けると2種類、会社に関する登記と、不動産に関する登記があります。今日取り上げるのは、2種類のうち会社に関する登記のお話です。
そもそも、「登記」とは・・・
会社には生身の人間のように「物」としての形がないので、触ったりして存在を確認することができません。そこで、会社という箱をつくるときには、「どんな名称で」「どこに拠点があって」「それは何年何月何日にできて」「どんなことをする会社で」「資本金がいくらで」「誰が責任者なんですよ」といったことを法務局に届け出て、その存在を登録します。
この登録を「登記」といいます。
この登録された内容は公開されていて、法務局やインターネットで手数料を支払えば誰でも見ることができます。
「登記」が済むと、その会社の存在が認められることになるので、会社名義の預金口座を開設することができたり、会社名義の車を購入できたり、会社名義の不動産を取得することができるようになります。
そして、商品を仕入れて売ったり、製品を製造して販売したり、サービスを提供して収入を得たりして稼ぐことができるようになります。会社は、稼いだ中から人件費を払ったり、水道光熱費や広告宣伝費、融資を受けていれば利息を支払ったりしながら利益を出して、会社を存続させていきます。
いわゆる会社経営ですね。
会社を閉じなければならない理由は様々ですが・・・
何年も、何十年も会社を存続させて運営していても、後継者がいなかったり、事業そのものが立ち行かなくなったりと、いろいろな理由から、会社の存在が必要なくなってしまうことがあります。そうなった時は、会社の存在をなくす手続きが必要になります。
会社の存在をなくす手順・プロセスは、なくそうとしている会社の種類や状態に応じていくつかあるのですが、最終的には会社の中身を空っぽにします。中身が入ったままの箱はたためないですからね、中身を空にしてたためるようにするわけです。
で、その「空っぽ」の状態を法務局に届け出ると、会社をつくる時にした登記について、閉める手続きをしてくれます。
これを「閉鎖登記」といって、「この会社は何年何月何日をもって無くなりました」という内容を、これまでの会社の登記事項に書き加えてくれます。
そうすれば、この会社と取引をしたいと思った人が、法務局でこの会社の登記の内容を調べれば、「あぁ、この会社は少し前に閉めたんだな」「この会社はもう無いんだな」ということを誰でも確認することができるわけです。
「閉鎖登記」は全ての手続きが終わってないと大変です
ところがです、前置きが長かったですが、会社を閉めて、法的に無いものとしてしまった後に、「会社名義の不動産が見つかった」り、「税務署から『この会社はまだ閉められないんじゃないですか?』と問い合わせが入った」りすることがあります。
そうしますと、どうしたものかと私どものところにご連絡を頂くことになるわけです。
こうなると、大変です・・・。
会社を閉鎖登記後に不動産売買するには
会社は法的に無いものになった「はず」なのに、その会社が不動産を持っているわけです。その不動産を欲しいという方がいても、持ち主である会社が存在しないことになっているわけですから、売ったり買ったりできません。一度は無いものとして閉鎖した会社を「復活」させて、持ち主を存在させるようにして、欲しいという方に会社が売却することになります。
会社を閉めても税務申告は必ず必要
税務署から連絡が入るのは、会社を閉める前に、「もう会社を閉めちゃうんだから、面倒だし、会社の申告書とかを税務署に出さなくてもいいか」と手続きをしなかった場合がほとんどです。
やはり同じように閉鎖した会社を「復活」させて、会社の中身が「空っぽ」になっていった経緯を決算書と申告書にとりまとめて税務署に提出することになります。
サラッと書いてますが、少々時間が経ってしまって、最後につくった決算書や提出した申告書、そして決算以降の書類などは全部廃棄してしまったりしている場合も少なくないです。通帳が見つからなければ、取引があった金融機関から取引履歴を入手して処理する必要も出て来ます。
あるいは、会社を閉めたことにしてから転居してしまっていることもあるでしょう。遠方から引っ越してこられた場合には、会社があった所轄税務署まで申告内容を閲覧しに行って、手書きで(コピーも写真撮影もできません。)書き写して来ます。
手間も時間も、そして交通費や報酬といった費用もかかります。
「会社を閉めたいんだけど、心配だなぁ。大丈夫かなぁ。」とご不安な方がいらっしゃいましたら、法務局に書類を出される前に、弁護士や税理士にご相談ください。
会社の清算に際して、それまでの顧問税理士に相談したけど、「ウチは清算はやらないんだよなぁ~」と断られてしまった司法書士の先生方からのご相談もお受けしております。