【横浜 相続】親から子や孫へ、現預金の生前贈与をキッチリ行うために。 ~その贈与、「預かっているだけ」になっていませんか? ~

2019年3月25日

 生前贈与が問題になるのは、相続税の税務調査の場面がほとんどです

いろいろな事情で、親から子へ資金を移すことがあります。後日返済することを前提に、親から借金することもあれば、生前贈与としてあげてしまうこともあるでしょう。

今回は、相続税対策として生前贈与をするときにおさえておきたいポイントのお話です。 

贈与税には住宅取得資金や教育資金などの特例もありますが、特例については利用できる方々が限られてしまいますので、特例には触れず、基本的なお話が中心となります。

 

相続税は税制改正に次ぐ改正で、申告を必要とする方が随分と増えました。国税庁によれば、平成28年中に亡くなった方で相続税の申告が必要だった方は100人のうち約8人。平成19年では100人のうち約4人でしたから、この10年でおよそ2倍になりました。以前より少ない財産でも相続税がかかるようになりましたから、「税金でもっていかれるくらいなら、元気なうちに子供や孫へ財産を移してしまいたい」と思うのも人情かもしれません。

不動産や株式を贈与することもできますが、登記をしなければならなかったり、時価が変動したりと、贈与を実行するには手間とタイミングと勇気がいります。そこで、時価の変動が無い現預金を贈与することが広く選ばれているのかもしれません。

この現預金の贈与は、『お金には名前を書けない』ことから、相続税の税務調査で問題になることが多いテーマです。「あなたが親御さんからもらったという預金は、親御さんの財産ですよ。」と税務調査官に言われないために、また言われても「もらったものですよ。」と説明できるようにするために、少なくともおさえておきたいポイントは、次の5つです。

 

 1.「贈与」があったことを説明するために

贈与は、あげる人(例えば親)が「100万円あげますよ」と言って、もらう人(例えば子)が「100万円もらいますよ」と言って、お互いに握手をすることで成立します。

この贈与の有無が問題になるケースの多くは、あげた人(親)についての相続税の税務調査の場面です。あげた人ともらった人がこの世にいれば、税務調査官の質問に対して、「あげたよ」「もらったよ」と説明することができます。しかし、相続税の税務調査の場所にあげた人(親)はいないので、あげた人(親)の「あげたよ」という気持ちを説明することができません。そんな状況で税務調査官に、「『もらった』とおっしゃっていますが、親御さんの預金を『預かっている』だけで、親御さんの財産なのではないですか?」と尋ねられた時に、説明できなくなってしまいます。そして、親御さんの相続財産の申告が少なかったということで、追加で納税することになってしまうのです。

「子供や孫の名前で作った口座に移しておけば大丈夫」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、それも税務調査官への説明になりません。(これについては、いわゆる「名義預金」というお話なので、改めてブログでご紹介したいと思っています。)

それを防ぐためにも、あげる人(親)ともらう人(子)の間で、贈与をすることについて契約書を交わして、お互いの気持ちを形に残しておくことが大切になります。もらう人が未成年者の場合には、親権者(法定代理人)が代わりに署名捺印します。

今の税法では原則として1年間に110万円以内であれば贈与税がかからず、贈与税の申告も必要ありませんが、贈与があったことの書面は作成するようにしましょう。

 

 2.「確定日付」を利用しましょう 

 贈与があったことの書面は、日付をさかのぼって作成することも出来てしまいますし、出来ることを税務署も知っています。なので「書面は日付をさかのぼって作成したもので、『贈与があったことにしている』のではないですか?」という質問に答えられなくなってしまいます。

そこで、全国にある公証役場というところで「確定日付」と呼ばれるスタンプを作成した書面に押してもらうようにします。

この「確定日付」というスタンプは、「この確定日付のスタンプが押された年月日に、正にこの書面がこの世に存在していました」ということの証明になります。書面の中身が正しいことを証明してくれるものではありません。確定日付は1通700円(平成30年10月1日現在)です。

 

             

          (確定日付のサンプル 法務省HPより)

 

 3. 贈与する金額を毎年変える必要はありません

「毎年同じ金額を贈与していると、贈与税がかかりますよ。」と言われることがあります。例えば、親から子へ毎年100万円ずつ10年間の贈与をしたとします。毎年贈与している金額は、贈与税がかからない110万円以下にしているので安心、というわけです。この場合、税務調査官から「10年前に1,000万円の贈与があって、分割払いをしているだけなんじゃないですか?」とか、「そもそも贈与は成立していないので、親御さんの預金をお子さんが預かってるだけなんじゃないですか?」と、贈与税の徴収権の時効(原則6年)も考慮しつつ税務署に有利になるような質問をしてきます。

 この対策として、毎年贈与する金額を変えたら大丈夫とか、110万円をちょっとだけ超えるようにして贈与税の申告と納税をしておいた方がよい、など個人的には都市伝説とも思える方法を耳にすることがあります。そのような事をしなくても、贈与があったことを示す書面を残しておけば昨年行った贈与と、今年行った贈与は全く別の事だと分かりますので、結果的に毎年同額の贈与になったとしても問題ありません。

 

 4. これまで何の書面も残してこなかった場合には・・・

「これまで、贈与があったことの書面なんて作ったことはないし、かといって日付をさかのぼって作っちゃダメだと言われるし、どうしたらいいんだ??」ということがあるかもしれません。そんな時は、ベストを尽くすという意味でも、「過去」にあった現預金のやりとりが贈与であったことを確認する書面を「今」の日付で残しておきましょう。全く書面が残っていない状態で税務調査官に説明するよりも、「あげた人」の「あげたよ」という気持ちは分かるようになりますので、説得力が高まります。

 

 5. 贈与税の申告は、贈与があったことの説明資料としては弱い

「年間で110万円以上贈与して、贈与税の申告と納税をしておけば、贈与があったことの証明になる」と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、贈与税の申告や納付は贈与があったことの証拠の1つにはなり得ても、証明としては十分ではありません。「贈与税の申告をしてるんだから、税務署だって贈与があったって分かってるじゃないか。」と税務調査官に説明しても、「贈与税の申告をなさるかどうかは納税者ご自身の問題なので・・・」と取り合ってくれないことすらあります。

 もうお気づきの方もいらっしゃると思いますが、贈与税の申告は「もらった人」の「もらいましたよ」という主張・アピールにしか過ぎません。そこには「あげた人」の「あげるよ」の気持ちが表現されていないので、「ホントに贈与があったのですか?あげた人はあげるという気持ちで預金を移しているのですか?」の質問には贈与税の申告をしていても答えられないのです。

 もしも、「私があなたから200万円もらいました」、と贈与税の申告をしたことが贈与があったことの証明になってしまったら大変ですよね・・・。

 

 将来に備えて、きちんと書面を残しておきましょう

 生前贈与について問題になるのは相続税の税務調査の場面がほとんどです。それは、「今」ではなく「まだ先」のいつかです。その「まだ先」のいつかに備えて、あげる人ともらう人の気持ちを書面に残しておくようにしましょう。

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