『家族信託のメリット・デメリットは? ~財産を託す、新たな仕組み~』

2019年7月4日

(1)そもそも家族信託ってなんだろう?

新聞や雑誌だけでなく、テレビでも取り上げられるようになった家族信託。「信託」の字のとおり、誰かが、誰かに、財産などを、信じて託す」仕組みです。

信託という言葉から信託銀行を連想される方もいらっしゃるかと思います。信託銀行はお客様から財産を託して頂くところから始まって、業務として運用し、収益をお戻しすることで手数料(信託報酬)を受け取ったりします。信託銀行が預かるのは財産に限らず、遺言を預かって、いざお亡くなりになってしまった場合に遺言の内容通りに執行するようなサービスなどもしています。

この「信じて託す」仕組みを、信託銀行などのプロではなく、家族など近しい人たちで行おうというのが家族信託です。例えば、お父様がご自身の財産をお子様に託し、お子様は託された財産をお父様の代わりに管理します。課税関係が分かり難かったこともあり、なかなか普及しませんでしたが、課税関係がはっきりしてきたことで、利用しやすくなったことから注目されるようになりました。

信託銀行などのプロが行う信託は「商事信託」と呼ばれ、内閣総理大臣から免許を受けて、金融庁の監督を受けることになります。

一方、家族信託は、民事信託の部類に入り、家族親族間など内々で信託の仕組みを作って行います。家族信託で「業」として信託を行ってしまうと信託業法に抵触する恐れが出てきますので注意が必要です。

(2)家族信託をすると、何かいいことがあるの?

家族信託が注目されるようになったのは、それなりのメリットがあるからです。

例えば、父(75歳)・母(70歳)・子(45歳)・子の妻(40歳)・孫(15歳)の5人家族が父名義の一戸建てに同居していたとします。父が元気なうちは何の問題もないのですが、父が認知症になってしまうと困ったことになります。何かの事情で転居することになり、自宅である一戸建てを売却したいと思っても、認知症の父が売主になることができません。「成年後見制度」という仕組みもありますが、利用するまでに家庭裁判所への手続きとそれなりの時間を要します。晴れて成年後見制度を利用できることになっても、自宅を売らなければならない理由を家庭裁判所に説明して、許しを得る必要があります。場合によっては売り時を逃してしまう可能性すらあります。

父が認知症ではなく元気なうちに、家族信託の仕組みを利用して、父名義の一戸建てを子に託して信託の登記をしておけば、父が認知症になったとしても、託された子が売主となって父の代わりに自宅を売却することが可能になります。家庭裁判所での手続きは必要ありません

(3)税金はどうなるの?

先の例で、父が子に託した自宅を売った場合、税務申告をしたり納税したりする義務が生じるのは父です。実際には、父に課された税務関係の義務を、託された子が父に代わって申告したり、納税したり、場合によっては税理士に依頼したりできるように家族信託契約という契約の中に盛り込んでおきます。

父名義の自宅を売却した代金を、託された子本人が受け取って申告したり納税したりするような仕組みの家族信託契約にしてしまうと、この契約を締結した時点で父から子への贈与として贈与税が課されてしまいますので、契約内容には注意が必要です。

(4)自宅を売る場面以外にメリットはないの?

家族信託そのものが柔軟な制度で、利用するご家族の状況に応じてハンドメイドで作っていくものなので、目的に応じて様々なことに利用が可能です。財産を託す方が「身体は元気だけど認知症」という場面では特に有効です。例えば親名義の賃貸物件がある方は、子に託しておくことで、親が認知症になっても託された子の名前で入居者と契約できたり、工務店に修繕の発注をしたりできます。また現金を託しておくことで、高齢者施設の費用や医療費などを託された子が支払うことができます。金融機関の窓口で「お父様名義の口座から、その金額を送金なさるにはご本人にお越し頂かないと・・・」と断られる心配もありません。

(5)聞いているとメリットばかりのような気がするけど?

いえいえ、慎重に家族信託の仕組みを作らないと、とんでもないことになります。例えば財産を託した方がお亡くなりになった時に相続争いが起きてしまったり、財産を託した親より託された子が先にお亡くなりになってしまったときに「家族信託」がストップしてしまったり、家族信託の契約をしたことで予想外の課税が生じてしまったり・・・、ということが起きてしまいます。

(6)ではどうしたらいいの?

やはり家族信託に詳しい専門家へのご相談をお勧めします。テレビや新聞などの影響は大きいので、『家族信託をやりたい』というご希望でのご相談も増えました。しかし、家族信託は万能ではありません。ご事情によっては家族信託以外の制度を使った方が、結果的にご本人のためになると判断できるケースも少なくありません。何年も経ってから、「家族信託なんてやらなきゃよかった」「何のための家族信託なんだ」ということにならないように家族信託の仕組みをご検討頂ければと思います。

※ 「家族信託」は一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。

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